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「ななめの音楽 -SCHRAGE MUSIK-」川原由美子

朝日新聞出版のホラー少女マンガ雑誌「ネムキ」2009年5月号(4月13日発売)にて連載開始した川原由美子「ななめの音楽 -SCHRAGE MUSIK-」のあらすじ紹介。

コミックスはソノラマコミックス(朝日新聞出版)全2巻。描き下ろしあり。
「ななめの音楽 -SCHRAGE MUSIK-」コミックスリスト

もとは約20年前に白泉社の少女マンガ雑誌「LaLa(ララ)」に掲載された読み切り作品。

ネムキ連載版は、LaLa(ララ)1990年1月号掲載の読み切り「ななめの音楽 -SCHRAGE MUSIK-」(川原由美子+佐藤道明)のリメイク。
作者名のところ、「川原由美子」の下に「based on non existent novel written by Michiaki Sato」と記述。「佐藤道明が書いた架空の小説を原作とする」でしょうか。

画面の変化に驚きました。
絵柄がリアルになったのはともかく、コマワリが実験的です。1ページに横長のコマが4個タテに並んで、映画の絵コンテのように同じ大きさ枠の中でいろいろな場面が繰り広げられます。枠の外が全てスミベタ。トーンワークもデジタル作業っぽいです。

「ななめの音楽(斜めの音楽)」とはドイツ語の「SCHRAGE MUSIK(シュレーゲ・ムジーク)」。もとは「ホットジャズ(ジャズ音楽)」をさす俗語であり、第二次世界大戦中のドイツ軍夜間戦闘機に装備された斜め上方を狙う機関砲のことでもあります。作品中も機関砲のこととして登場します。

〔「ネムキ」2009年3月号掲載の予告〕
>川原由美子「ななめの音楽」カラー41枚
>あこがれを胸に抱き、一人の少女が目で追うその姿。それは彼女を光輝く別世界へと誘うもの……。
>そして待ち受ける運命に導かれるようにして少女は……。
イラストはフード付きコートに黒髪ストレートの少女(連載の主人公のこゆる)。

ブログ(右月左月)に書いた連載の感想を転載しています。

「ななめの音楽 -SCHRAGE MUSIK-」
読み切り版あらすじ

「ななめの音楽 -SCHRAGE MUSIK-」 #1 Invitation〈ネムキ2009/05〉
「ななめの音楽 -SCHRAGE MUSIK-」 #2 Towers〈ネムキ2009/07〉
「ななめの音楽 -SCHRAGE MUSIK-」 #3 Flowers〈ネムキ2009/09〉
「ななめの音楽 -SCHRAGE MUSIK-」 #4 Ruins〈ネムキ2009/11〉
「ななめの音楽 -SCHRAGE MUSIK-」 #5 Skeins〈ネムキ2010/01〉

「ななめの音楽 -SCHRAGE MUSIK-」 読み切り版

◆「ななめの音楽 -SCHRAGE MUSIK-」(川原由美子+佐藤道明)のあらすじ
LaLa(ララ)1990年1月号掲載/読み切り(68P)

(第二次世界大戦終了から40年後の)現代を舞台に、浮世離れした金持ちの名誉をかけたプロペラ飛行機レースのお話。
主人公は「日本人形」の愛称で呼ばれる美少女で、代々飛行機を愛するドイツの伯爵家の孫娘。
日本の高校に留学中の光子・シュナウファーを迎えに、ドイツの老伯爵がプロペラ飛行機を駆って高校の校庭に降り立った。光子の兄が事故で大怪我をしたため、代理で光子が飛行機レースのパイロットとして出場することになる。きれいなレーサー機に乗れると大喜びだった光子だが、レースに勝てそうもないおんぼろの飛行機に乗ることになる。
欠場の不名誉を避けるためだけのお人形と考えている伯爵たちに反発し、光子は「ななめの音楽を聞きたい」と要求する。「ななめの音楽」とは第二次世界大戦中のドイツ軍夜間戦闘機に装備された、斜め上方を狙う機関砲のこと(もちろんレース機に機銃などの武器搭載は禁止)。
光子はレース前のパーティで、シュナウファー家の宿敵アウトラム家に雇われているパイロットに彼の飛行機を見せてもらい泣くほど喜ぶ。実はアウトラム家のパイロットは、光子が幼いころに朽ちた飛行機で基本的操縦法を教えてくれた青年だった。墜落で左腕をなくして病院に入院していた青年は、スポンサーがついて義手をつけパイロットになり光子と再会した。
「ななめの音楽」の代わりに日本からくっついてきた後輩の女の子を同乗させることを押し付けられながら、機体検査や悪天候をかいくぐり長距離レースに飛び立つ。
レース折り返し地点で給油用母艦に着艦失敗し墜落し機体から放り出された光子は、助けに駆け寄ったアウトラム家のパイロットを突き飛ばし、アウトラム家のレース機を奪って飛び立つ。光子の飛行機をみんなで追いかけて DAS END(おしまい)。


後年、森博嗣さんの小説『スカイ・クロラ』を読んだとき「ななめの音楽」っぽい話だと個人的に感じました。時代に逆行したプロペラ飛行機による戦闘とか世俗を超越した天才飛行機乗り。ストーリーはぜんぜん違うけど、凡人とはまったく別の思考の天才ぶりに衝撃を受けました。
(blog:2009/02/19)→(2009/08/25)

「ななめの音楽 -SCHRAGE MUSIK-」 #1 Invitation

この話が掲載された雑誌はこちらから購入できます。
アマゾン ネムキ 2009年 05月号 [雑誌]

「ななめの音楽 -SCHRAGE MUSIK-」 #1 Invitation
川原由美子(41ページ/扉カラー1ページ)
ネムキ2009年5月号(朝日新聞社)


〔「ななめの音楽」第1話あらすじ〕
高層ビルが立ち並ぶ未来都市の女子校。伊咲こゆるは友人の織音と珠里に恋愛の魔術のために「精霊をみつける機械」を見せられる。壊れた機械を直すために阿四(あずまや)にいた光子先輩に相談し、助言を受ける。
友人たちが去った後、迎えに来た「雲のお城」のような飛行船に光子が乗り込む。光子から借りたメディアプレーヤーを返すために追いかけたこゆるは、光子と話していた男装の美女に誘われて飛行船に乗り込む。(以下次号)



読み切り版では光子先輩視点で展開していましたが、連載版は後輩の女の子視点で展開しています。後輩の女の子はきゃぴきゃぴのおばかな子(めぐみ)からもう少し普通の子になっています。光子が前髪センター分けでかなり大人っぽくなっています。
こゆるの友人たちとベラエクスマキナ(精霊をみつける機械)のエピソード追加。
阿四で光子がイヤホンで飛行機の音を聞いていたエピソード、読み切りはウォークマンで連載版はメディアプレーヤに変更。
光子を迎えに来たのが戦闘機に乗った老伯爵から、飛行船に乗った男装の美女(ラウラ)に変更。老伯爵は飛行船の中に乗っています。

どう展開するか楽しみです。次回も40ページと大量ページですが、隔月刊の雑誌だからコミックスが出るのは何年先やら。毎号ネムキを買うのかな。ホラーマンガ雑誌苦手なんだけど。
(blog:2009/04/14)→(2009/08/25)

「ななめの音楽 -SCHRAGE MUSIK-」 #2 Towers

この話が掲載された雑誌はこちらから購入できます。
アマゾン ネムキ 2009年 07月号 [雑誌]

「ななめの音楽 -SCHRAGE MUSIK-」 #2 Towers
川原由美子(40ページ)
ネムキ2009年6月号(朝日新聞出版)

〔「ななめの音楽」第2話あらすじ〕
こゆる、ラウラに連れられて、ドイツにある光子の実家の城へ行く。
ジャンボジェット機+列車+車でグリーゼ家の居城(黒くて冷たい高い塔)へ。
こゆるの見た夢(月に帰りたいうさぎ)の部分の絵は川原さんらしくてちょっとかわいい。やっぱりこの作品のリアル嗜好の絵は意識して描いているのですね。
耳に付ける小型の通訳器で、こゆるもドイツ語の会話が可能になっております。
こゆると光子の祖父との会食の途中で光子から通信。D-11(飛行機)が使えないことに抗議。
ラウラに連れられて城内で幽霊狩りに出かけたこゆるは、塔の屋上から光子の操縦する飛行機を見る。

今回の冒頭に出てくる、月に帰りたいうさぎの立体絵本はたぶんオリジナル。



◇読み切り版との違い。
・読み切りでは光子と一緒にめぐみ(後輩の女の子)が城に到着。途中、競技参加機らしい飛行機を見て10年前に飛行機の操縦を教えてくれた青年を思い出す。城についてすぐ飛行機の格納庫を訪れる(←カット)
・光子の実家、アウグスヴルグにあるギュンターホフ城(屋根のある中世的城+高層ビルの複合建造物)→グリーゼ家の居城(のっぺりした2棟の高層ビル)へ。
・怪我をしたのが光子の兄→父親に変更。
・学校は中間試験まで約一週間→冬休み期間中に変更。

実験的なコマ割り、夢見る少女のあこがれの感情を丁寧に描いた内容。読む人を選びますね。個人的には面白いけど、元の話のあらすじを知らないと理解しにくくていらつくかもな。
(blog:2009/06/23)→(2009/08/25)

「ななめの音楽 -SCHRAGE MUSIK-」 #3 Flowers

この話が掲載された雑誌はこちらから購入できます。
アマゾン ネムキ 2009年 09月号 [雑誌]』朝日新聞出版(2009/08/12)

「ななめの音楽 -SCHRAGE MUSIK-」 #3 Flowers
川原由美子(41ページ/扉カラー1ページ)
ネムキ2009年9号(朝日新聞出版

〔「ななめの音楽」第3話あらすじ〕
城に帰ってから一度も自室を光子お嬢様を巡って、メイドたちがお嬢様の存在自体を疑問に思う。
こゆると会ったメイドは、光子の部屋の支度をしたときに調度の覆いの下に花びらを仕掛けてあったことを話す(おそらく前回の担当メイドの仕掛け)。
老伯爵とラウラ(今回、執事と判明)の会話。ライバルの香椎(かしい)飛行機製作所の機体とパイロットについて議論する。水素燃料・ヴァンケルエンジンを積んだ新造機の飛行機、華やかな少女パイロットを持ち出す香椎を「火星の大気圏より地球の稼ぎをとるのだな」と評する。
光子を探して温室に入ったこゆるは、プロペラ機(スピットファイア)の座席で眠る光子を見つける。子どものときにこのスピットファイアで出会った英語訛りのドイツ語を話すパイロットに正しい操縦法を教えてもらったことを話す。(投影機をつけるとスピットファイアで飛行訓練シュミレーションができる?)
光子はD-11(単座の戦闘機)でシュレスヴィヒ(レースの開催地?ドイツ北方の地方)へ向かう。こゆるはあとからラウラの操縦する複座の飛行機で光子の後を追う。途中、光子が待っていた双発機、He-299B(ベルタ)の飛行を目の当たりにする。ようやく機嫌が良くなった光子がこゆるに歓迎の言葉を述べる。



◇読み切り版との違い。
・メイドたち→連載版のオリジナル
・着物→読み切り版ではパーティで着たドレスみたいなキモノ。今回こゆるの母から花柄の振袖が送られ、それを光子がパーティで着ると言う。
・ライバル→読み切り版はイギリスだったが、連載版は日本?
・光子が飛行機の操縦を教わったスピットファイア→読み切り版は墜落して山中に放置された残骸。連載版は老伯爵のコレクションで格納庫に置かれ、投影機で周囲に空を映し出し操縦シミュレーションできる。
・ライバルのパイロット→読み切りでは子どものころの光子に飛行機の操縦を教えた青年。連載ではアイドル系の女の子。

サブタイトルの「Flowers」は前回の「Towers」と韻を踏んでいます。

(blog:2009/08/13)→(2009/08/25)

「ななめの音楽 -SCHRAGE MUSIK-」 #4 Ruins

この話が掲載された雑誌はこちらから購入できます。
アマゾン ネムキ 2009年 11月号 [雑誌]』朝日新聞出版(2009/10/13)

「ななめの音楽 -SCHRAGE MUSIK-」 #4 Ruins
川原由美子(40ページ)
ネムキ2009年11号(朝日新聞出版

〔「ななめの音楽」第4話あらすじ〕
飛行訓練中に離れ小島に不時着した光子とこゆる。灯台守を探して歩き回るうちに二人ははぐれてしまう。こゆるは奇妙な幼女にまとわるつかれ、建物の小部屋に閉じ込められる。こゆるは光子に助け出される。二人は飛行機に戻り食事をとる。
飛行機のそばで一晩すごし、翌日灯台を訪ねる二人。そこでこゆるをいじめた幼女とその祖母に会う。こゆるが首からぶら下げていた機械を奪った幼女は灯台に登り、バランスを崩して墜落する。光子が飛び出して体ごと受け止めると、光子のパイロットスーツの安全装置が作動して桃のように二人を包み込む。
ラウラに連絡を取り救援がくる。光子は、幼女(名前はリーネ)の祖父母の灯台守夫妻に礼を言う。

グリーゼ家に戻り、光子、こゆる、老伯爵、ラウラの4人で温室にて食事を取る。光子はその席に機関銃を用意し、レースの飛行機に装着することを要求する。


◇読み切り版との違い。
・飛行訓練はオリジナルエピソード。
・後輩の女の子を連れて行かせるのは、光子が危険行為をしないためということを光子が言うシーン。読み切りでは「ななめの音楽を聴きたい」と言い出した後のエピソード。
・機関銃を装着することを光子は直接要求する。読み切りでは「ななめの音楽が聞きたい」ということで機関銃装着を示唆する。
・呼び出されたときにラウラが出席していた会議で「シュミート女史」と呼ばれていました。フルネームはラウラ・シュミートか。
・レースの賞品は「火星大気圏を飛ぶ航空機の製作権」。ただし火星の空を飛ぶのは、人類が乗り込まない無人機。

サブタイトルの「Ruins」は廃墟、遺跡の意。

(blog:2009/10/14)→(2010/02/19)

「ななめの音楽 -SCHRAGE MUSIK-」 #5 Skeins

この話が掲載された雑誌はこちらから購入できます。
アマゾン ネムキ 2010年 01月号 [雑誌]』朝日新聞出版(2009/12/12)

「ななめの音楽 -SCHRAGE MUSIK-」 #5 Skeins
川原由美子(40ページ)
ネムキ2010年1号(朝日新聞出版

〔「ななめの音楽」第5話あらすじ〕
飛行機レース「第一レグ龍の背を渡る者」の出発地点シュレスヴィヒ空軍基地にレースの参加者が集まってきた。
レース前日のレセプションが始まる前に、グリーゼ卿(老伯爵)と執事のラウラと共に振袖姿のこゆると光子が飛行機を見て回る。
グリーゼ卿の友人のバビントン卿と話している間にこゆると光子はグリーゼ卿たちと別れる。バビントン卿のチームに以前所属していたパイロット、ヴィク・リドゲート(今回はチーム・ウインドワークス所属)がバビントン卿たちに話しかけてきた。
香椎航空機のパイロットをつとめる日本の女性アイドル、久永まな希(ひさなが・まなき)がこゆるたちに声をかけてきた。機体の調整を手伝うという光子に置いていかれたこゆるはまな希にからまれる。
リドゲートはラウラに、十年前の光子の話をする。お空がなくて飛行機がかわいそうという光子のために、地下格納庫にモニタを置いたのが彼だった。ラウラはリドゲートのチームの機体が武装されている噂を持ち出して、光子たちに攻撃しないように釘を刺す。
そのとき皆の目の前で飛行機事故が起こる。パイロットは無事だったが、心配になったこゆるは光子のために花と香油で御護りを作る。
にぎやかなレセプションから明けてレース当日の朝、パイロットたちは飛行機に乗り込んで離陸し、空にあるスタートラインを目指す。



今回はレセプション用のドレスや振袖で画面が華やかでいいですね。
今回の光子さんはぱっつん前髪のかつらをかぶっていて、こゆるの言うとおり十歳ぐらい若返って見えます(笑)。読み切りのパーティに着ていた着物はチャイナドレス風でしたが、今回は伝統的な大振袖。こゆるは外ではショールと被布みたない袖なしの上着を着ていました。被布なら帯を覆うけど、帯が見えるからエプロンみたいに前だけなのかな。
まな希がこゆるに貸してくれた「リカンベント」。シートに寝そべるような姿勢で前輪のペダルをこぐ自転車の一種です。電動リカンベントがあるかわかりませんが、リカンベントは現実にある機械です。
レセプションのパイロット紹介で光子の名前が出ました。光子・グラーフィン・フォン・グリーゼ。Graefin(グラーフィン)はドイツ語で「伯爵令嬢(伯爵夫人)」。「伯爵」はGraf(グラーフ)です。
レースのスタートラインが空にあるというのは、競艇みたいに決められた時間内にスタートラインを通過する「フライングスタート方式」かな。
いよいよレースが始まる期待感で盛り上がってきました。

サブタイトルの「Skeins」は「もつれ・混乱」または「(飛んでいる野鳥の)大群、群れ」の意。

(blog:2009/12/28)→(2010/02/19)

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[2013/08/13]
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