■ 和柄・和の模様・和のデザイン〔その他〕
〔その他和柄〕目次
■釘抜繋ぎ(くぎぬきつなぎ) ■曲輪繋ぎ(くるわつなぎ) ■吉原繋ぎ(よしわらつなぎ) ■子持吉原(こもちよしわら) ■毛卍文(けまんもん) ■唐草模様(からくさもよう) ■豆絞り(まめしぼり) ■鹿の子絞り(かのこしぼり) ■紗綾形(さやがた) ■工字繋ぎ(こうじつなぎ) ■一の字繋ぎ(いちのじつなぎ) ■井桁卍(いげたまんじ) ■雷文・雷紋(らいもん) ■一つ豆蔵(ひとつまめぞう) new |
釘抜繋ぎ(くぎぬきつなぎ)
斜めにした正方形の中央に小さく正方形を入れた模様を「釘抜」という。 釘抜き(打ちつけてある釘を抜く道具)の座金(ざがね)をかたどった文様で、紋所などにも使われる。 「釘抜」を縦に繋いだ連続模様が「釘抜繋ぎ」と呼ばれる。 とび職など職人の半纏(はんてん)に使われた庶民的な模様である。 《構成要素》 正方形、斜め、連続模様 (No.030:2006/10/04) |
曲輪繋ぎ(くるわつなぎ)
丸い輪を打ち違いに重ねてつなげた文様。 「郭繋ぎ(くるわつなぎ)」「輪違繋ぎ(わちがいつなぎ)」とも言う。 手ぬぐい、浴衣などに染められた。 輪を二つ打ち違いに重ねた文様は「輪違(わちがい)」と言い、家紋にも使われる。 《構成要素》 円、連続 (No.050:2007/11/22) |
吉原繋ぎ(よしわらつなぎ)
環状の四角形の四隅をくぼませた形を斜めにして打ち違いに繋ぎ合せた、鎖のような文様。 吉原の手引き茶屋の暖簾に用いたのでこの名がついたという。 別名「廓繋ぎ(くるわつなぎ)」「角繋ぎ(かくつなぎ)」。 現代では浴衣や手ぬぐいの柄としてよく使われる粋な和柄。 吉原つなぎの変種で内側に小さい四角を入れ子にした「子持ち吉原」もよく使われる。 《構成要素》 四角形、連続模様 (No.080:2009/08/20) |
子持吉原(こもちよしわら)
「吉原繋ぎ」の四角形の内側に、さらに小さな四角を入れ子にしたものをつないだ、鎖のような文様。 これをさして「吉原繋ぎ・吉原つなぎ」ともいう。 《構成要素》 四角形、連続模様 (No.081:2009/08/27) |
毛卍文(けまんもん)
三日月形を放射状に並べた円形の模様。 唐獅子(からじし)の身体の巻き毛を図案化したもの。獅子毛(ししげ)。 毛の房が「卍(まんじ)」のように追いかけあう形なので「毛卍文」と呼ぶ。 唐獅子はライオン(獅子)を美術的に装飾化したもの。太陽の力を宿す架空の聖獣として古代ペルシアから中国の唐を経由して日本に伝わり、この名がある。 唐獅子の体表の巻き毛は、太陽の象徴でもある吉祥のしるし。 日本伝統の民俗芸能「獅子舞」の覆(胴体部分を覆う布)の模様は、緑地に白抜きの毛卍文が使われる。 《構成要素》 三日月形、放射状、円 (No.062:2008/09/04) |
唐草模様(からくさもよう)
古典的な植物文。 絡み合う植物の蔓(つる)を、複数の曲線や渦巻き模様を組み合わせて図案化した模様。 蔓の間に花や葉や実などをあしらった写実的なものから、簡略化されたものまで多くの種類がある。 (見本の図案はかなり簡略化されたもの) 蔓と組み合わせる植物によって、忍冬(にんどう)唐草・葡萄唐草・牡丹唐草・蓮華唐草などの変種もある。 唐草文様(からくさもんよう)。唐草文。 古代エジプトやメソポタミアを起源とし世界中に広まった植物模様が、シルクロード経由で中国の唐を経て日本に入ったので「唐草」と呼ばれる。ヨーロッパでは「アラベスク(アラブ風の)」と呼ぶ。 植物の生命力にちなみ繁栄を願う吉祥文様として、建築・家具・雑貨・衣服などの装飾に使われる。 緑地に白抜きの唐草模様の風呂敷は、日本の庶民的な雑貨として江戸時代から親しまれる。 《構成要素》 曲線、渦巻き、植物 (No.063:2008/09/11) |
豆絞り(まめしぼり)
紺地に白、または白地に紺で、豆粒のような小さな丸を並べた絞り染め。 手ぬぐいや浴衣に用いる。 基本は木綿に藍染めで、白地に紺。庶民向け。 (No.031:2006/10/11) |
鹿の子絞り(かのこしぼり)
◎または回のような形の白い斑(まだら)をいくつも散らし、または並べて染めた絞り染めの模様。 まだらを子鹿の背中にあらわれる斑紋に見立てたもの。 布地を指先で少量つまんで糸でくくり防染し、糸でくくった部分を白い粒状に隆起させて染め出す。出来上がりの表面がでこぼこしている。 平安時代以降は「目結(めゆい)」。桃山時代以降「鹿の子絞り」などと呼ぶ。 鹿の子染。鹿の子目結い。鹿の子結い。 基本は絹に紅染めで、赤地に白いまだらを染め抜く。 ※画像作製参照『Photoshop10分間パターンデザイン』古岡ひとみ〈MdN〉 (No.032:2006/10/11) |
紗綾形(さやがた)
「卍(まんじ)」の字を斜めに崩して組み合わせた連続模様。 紗綾(絹織物の一種)に用いたから名づける。 「卍崩し(万字崩し)」「卍繋ぎ(万字繋ぎ)」「雷文繋ぎ」などともいう。 江戸時代には京阪では「綸子形」、江戸では「紗綾形」と呼んだ。 江戸時代は上級武士の着物など男物に用いられたが、江戸後期になると女物にも用いられた。 吉祥文様とされ、江戸時代には女性の慶事礼装用の白襟に決まって使われたという。 現代でも綸子(りんず)・縮緬(ちりめん)などの白生地の地紋によく使われる。 《構成要素》 連続模様、卍、斜め、直線 ◇紗綾(さや) (「サアヤ」の転訛) 平織り地に、稲妻・菱垣(ひしがき)・卍(まんじ)などの模様を斜文織りで表した、光沢のある絹織物。 室町末ごろから江戸前期にかけて、中国から盛んに輸入された。 語源は、ポルトガル語のsaia(スカート)からともいう。 (No.053:2008/01/23) |
工字繋ぎ(こうじつなぎ)
「工」の字を斜めに崩して繋ぎ合わせた連続模様。 紗綾形と同じように、きものの地紋によく使われる。 《構成要素》 連続模様、工、斜め、直線 (No.054:2008/01/31) |
一の字繋ぎ(いちのじつなぎ)
平行線の間を、交互に垂直線で区切った模様。横長の同じ大きさの長方体を交互に積み上げた、れんが積みのような模様。 レンガ模様(brick, brick wall)。 《構成要素》 直線、平行線、長方形 (No.067:2008/11/27) |
井桁卍(いげたまんじ)
2本の平行線を垂直に2つ重ねた「井桁」模様を組み合わせて隙間なく構成した連続模様。 「井桁」は井戸の上部の縁に「井」の字の形に四角に組んだ木枠。 「卍」は4つの部品が集まる部分が「卍」に見えることから。 《構成要素》 直線、平行線、連続 (No.077:2009/05/21) |
雷文・雷紋(らいもん)
方形(四角形)の渦巻状文様。雷や稲妻を曲折した直線に形象化した文様。 単独ではなく、数個連続するのが特色。 帯状につなげたもの、菱形の渦巻きを斜めに並べたものなどヴァリエーションが多い。 中国で古代から愛好。ラーメンどんぶりの縁飾りとしてよく知られ、中華のイメージ。 日本では桃山時代以降、江戸時代の能装束によく使われ、荒々しい役柄を表した。 織物の地模様にも使われる。 《構成要素》 直線、渦巻き、四角形 (No.068:2009/01/08) |
一つ豆蔵(ひとつまめぞう)
釣合人形(やじろべえ)を図案化した文様。 笠をかぶって合羽を着たやじろべえ人形の後ろ姿。 釣合人形(つりあいにんぎょう)とは、人形の形をした振子玩具。短い棒の上端に湾曲した横棒をつけ、腕に見立てた横棒の両端に重りをつけたもの。重心が支点より下にあるので、指先などで支えただけで釣合い(バランス)がとれる。 釣合人形を現在では「やじろべえ」と呼ぶ。人気小説「東海道中膝栗毛」の主人公コンビ「弥次喜多」のひとり、弥次郎兵衛が振分け荷物を肩にした旅姿を人形にしたことから。 「豆蔵(まめぞう)」は江戸時代の大道芸人の名前。こっけいな身振りと早口で人を笑わせた。 豆蔵が活躍したのは元禄(1688~1704)頃。「東海道中膝栗毛」が享和2年~文化6年(1802~09年刊行)なので、釣合人形を古くは「豆蔵」と呼び、江戸後期からは「やじろべえ」にとってかわったようだ。 《構成要素》 玩具、器物 (No.124:2015/10/22) |