■ 和柄・和の模様・和のデザイン〔役者文様〕
〔役者文様〕目次
■三枡格子(みますごうし) ■高麗格子(こうらいごうし) ■三枡繋ぎ(みますつなぎ) ■六弥太格子(ろくやたごうし) ■三津五郎縞(みつごろうじま) ■菊五郎格子(きくごろうごうし) ■市村格子(いちむらごうし) ■芝翫縞(しかんじま) ■亀蔵小紋(かめぞうこもん) ■手綱染(たづなぞめ) ■イ菱(いびし) ■鎌輪ぬ(かまわぬ) ■斧琴菊(よきこときく) new |
高麗格子(こうらいごうし)
「高麗屋格子(こうらいやごうし)」ともいいます。 太い筋と細い筋を等間隔に1本ずつ交互に配し、縦横に交差させた格子縞。 横より縦の間隔が広い縦長の格子。 江戸時代の歌舞伎役者、四代目・松本幸四郎が狂言「鈴が森」の中で町奴・幡随院長兵衛(ばんずいいん・ちょうべえ)を演じた時に、この格子柄の合羽を着て好評を博しました。松本幸四郎の屋号「高麗屋」から、「高麗屋格子」「高麗格子」と呼ばれ大いに流行しました。 《構成要素》 格子縞、太縞1+細縞1、縦長 (No.022:2006/07/27) |
三枡格子(みますごうし)
三筋格子(同じ太さの筋が3本1組で縦横に並べられた格子縞)に、3本筋とは間を空けて1本または複数の筋を加えた格子縞。3本筋と別の筋は太さや色が違う場合もある。 三筋格子自体を三枡格子と同一とする場合もある。 江戸後期の文化年間の縞・格子の流行にともない、歌舞伎役者の七代目・市川団十郎が定紋の「三枡」を崩して考案した模様。ゆえに「団十郎格子」ともいう。 《構成要素》 格子縞、細縞×3+n ※参考:三枡繋ぎ (No.052:2007/12/12) |
三枡繋ぎ(みますつなぎ)
三つの正方形を重ねた模様を、大・中・小の三つ入れ子の枡に見立て「三枡文(みますもん)」「三枡」という。 歌舞伎役者の初代・市川団十郎が稲妻文から考案したといわれ、市川家の定紋として有名。 三枡文を一列に並べた模様、またはに互い違いに並べた石畳(市松)模様を「三枡繋ぎ(みますつなぎ)」「三枡縞(みますじま)」と呼ぶ。 《構成要素》 正方形、大中小、連続 ※参考:三枡格子 (No.051:2007/12/07) |
六弥太格子(ろくやたごうし)
三枡文(みますもん/三つの正方形を重ねた模様)を互い違いに組み合わせた連続模様。 三枡繋ぎ(みますつなぎ)および角繋ぎ(かくつなぎ)の変形。 江戸時代後期の嘉永年間に、歌舞伎役者の八代目市川団十郎が「一谷武者絵土産」の岡部六弥太(平忠度を一ノ谷の戦いで討ち取った源氏の武将)に扮したときに、裃(かみしも)にこの文様を使い、この名が定着した。 「三枡文」は市川家の定紋である。 現代でも浴衣や手ぬぐいなどの柄に用いられる。 《構成要素》 役者文様、正方形、繋ぎ ※参考:三枡繋ぎ・角繋ぎ (No.057:2008/05/22) |
三津五郎縞(みつごろうじま)
3本・5本・6本の縞を縦横に交差させた格子模様。 「三津五郎格子(みつごろうごうし)」ともいう。 江戸後期の文化・文政時代の歌舞伎俳優、三代目・坂東三津五郎の名前にちなみ(三五六→みつごろう)つけられた名称。 《構成要素》 役者文様、縞(3本・5本・6本)、格子 (No.058:2008/06/12) |
菊五郎格子(きくごろうごうし)
縦4本と横5本の合計9本の縞を縦横に交差させた格子柄の間に「キ」と「呂」の文字を入れ、「キ九五呂(きくごろ→菊五郎)」を読ませる。 江戸後期の文化・文政時代の歌舞伎俳優、三代目・尾上菊五郎(おのえ・きくごろう)が考案したとされる。 菊五郎の役者文様では他に「斧菊琴(よきこときく)」が有名。 《構成要素》 役者文様、縞(4本・5本)、格子、文字 (No.059:2008/07/24) |
市村格子(いちむらごうし)
横1本と縦6本の格子の間に「ら」の文字を入れ、「一六ら(いちむら→市村)」と読ませる。 江戸時代の歌舞伎俳優、十二代目・市村羽左衛門(うざえもん)が好んで使った。 格子の筋が部分的に欠けている「破れ市村格子」という変種もある。 《構成要素》 役者文様、縞(1本・6本)、格子、文字 (No.061:2008/08/21) |
芝翫縞(しかんじま)
四本の縦縞の間に楕円の環繋ぎを置いた模様。 江戸時代後期の文化年間に、歌舞伎役者の初代中村芝翫(三代目中村歌右衛門)が「芝翫(しかん)」と「四環」の語呂合わせで舞台衣装に用いて流行させた。 現代でも浴衣や手ぬぐいなどの柄に用いられる。 《構成要素》 役者文様、四本縞、楕円、環繋ぎ (No.056:2008/04/03) |
亀蔵小紋(かめぞうこもん)
大小の渦巻(うずまき)模様を散らした小紋柄。 江戸時代中期の享保初期から天明初期にかけて活躍した歌舞伎役者、市村亀蔵(のちの九代目・市村羽左衛門)が着始め流行する。 《構成要素》 役者文様、うずまき、小紋 (No.060:2008/07/31) |
手綱染(たづなぞめ)
紅白・紫白などの2色で幅広に染め分けた斜めの縞模様。 馬の手綱によく使われることから名づけられる。 だんだら染。 布の横筋を染めた横縞も「手綱染」(江戸)「だんだら染」(京阪)と呼んだ。 紅白左巻きの手綱染を特に「小六染(ころくぞめ)」という。 江戸時代、享保(1716-1736)の頃の名女形だった歌舞伎役者、嵐小六が「夢結ねぐらの蝶」のお房役の舞台衣装に用いたことから流行した。 《構成要素》 斜め縞 (No.043:2007/06/08) |
イ菱(いびし)
カタカナの「イ」の字を4つ、90度づつ向きを変えて卍の様に追いかける形に並べた模様。 「イ」の斜めの線が菱形の輪郭線に見える。 「イの字菱」とも言う。 歌舞伎役者の名跡(みょうせき/代々受け継がれる名前)のひとつ・中村鴈治郎(なかむら・がんじろう)の定紋。 《構成要素》 役者文様、イ、菱形 (No.064:2008/09/25) |
鎌輪ぬ(かまわぬ)
判じ物文様(はんじものもんよう)、悟り絵(さとりえ)、謎染め(なぞぞめ)の一種。 「鎌輪奴(かまわぬ)」とも書く。 「鎌」の絵と「○」(輪の絵)とひらがなの「ぬ」の字で「かまわぬ(構わぬ)」と読む。 「ぬ」を○で囲ったもの、○と「ぬ」が別になったものなど変種が多い。 江戸時代初期の元禄(1688~1704)前後、町奴(町人の侠客)などの間に流行した衣服の文様。「水火も辞せず(私の命はどうなってもかまわぬ)」という心意気で好んだ。 一時すたれた後、江戸時代後期の歌舞伎役者の七代目市川団十郎(1791~1859)が舞台で着て大流行する。役者文様にも分類される。 今でも浴衣や手ぬぐいに用いられる粋な柄。 団十郎のライバルの三代目尾上菊五郎が張り合って、「斧琴菊(よきこときく)」という吉祥文様を愛用した。 「鎌輪ぬ」は男性が好み、「斧琴菊」は女性に愛用された。 《構成要素》 判じ物文様、役者文様 (No.087:2010/09/24) |
斧琴菊(よきこときく)
判じ物文様(はんじものもんよう)、悟り絵(さとりえ)、謎染め(なぞぞめ) の一種。 「斧(よき)」「琴」「菊」を合わせて「善き事聞く」と読ませる吉祥文様。 「斧」の絵と「琴柱」の絵(または「琴」の漢字)と「菊」の花の絵で「斧琴菊」を表す。 「よき」は「斧(おの)」の別称。 「琴柱(ことじ)」は琴の胴の上に立てて弦を張り、音を調節する道具。 バイオリンでいうとブリッジ、または駒(こま)と呼ばれる部品。 大きく開いた方が下になる。 「斧琴菊」に使われる菊の絵は、丸で簡略化した菊の花。「万寿菊(まんじゅぎく)」もしくは「光琳菊(こうりんぎく)」と呼ばれる模様。 江戸前期に小袖の模様などに使われたがすたれた。 その後、歌舞伎役者の三代目尾上菊五郎(1784~1849)がライバルの七代目市川団十郎の「鎌輪ぬ」に対抗して、自分の名前の「菊」が入る「斧琴菊」を舞台衣装に使ったとも言われる。 「鎌輪ぬ」は男性が好み、「斧琴菊」は女性に愛用された。 《構成要素》 判じ物文様、役者文様 (No.088:2010/10/14) |